日本競馬の長い歴史のなかで、「3頭の三冠馬が同じレースで激突した」という、前代未聞の奇跡の一戦があります。それが2020年のジャパンカップ(GⅠ)。主役は、史上最多の芝GⅠ8勝(当時)を挙げた絶対女王アーモンドアイ、無敗のクラシック三冠馬コントレイル、そして無敗の牝馬三冠馬デアリングタクトです。
過去・現在・未来のすべてが交錯した東京競馬場の2400m。絶対女王の意地と、無敗の3歳馬2頭のプライドが真っ向からぶつかり合った、伝説の世紀の一戦の全貌に迫ります。
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この記事でわかること
✅ アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトによる「三冠馬3頭激突」の背景
✅ 2020年ジャパンカップ(GⅠ)の出馬表とレース展開
✅ キセキの大逃げと、絶対女王が伝説となった勝負を分けたポイント
①このレースはなぜ「名勝負」なのか
2020年のジャパンカップが競馬史に残る名勝負と言われる理由は、「日本競馬史上初となる『3頭の三冠馬』の直接対決が、お互いに誤魔化しのきかない極限のガチンコ勝負として現実のものになったから」です。
この年は、前走の天皇賞(秋)で史上初となる芝GⅠ8勝の金字塔を打ち立てた絶対女王アーモンドアイ、そして史上初となる「牡馬・牝馬の同一年・無敗の三冠馬(コントレイル、デアリングタクト)」が揃い踏みを果たすという、文字通り100年に一度の奇跡の年でした。
三冠馬同士がジャパンカップで顔を合わせること自体が2012年(ジェンティルドンナVSオルフェーヴル)以来3回目、そして3頭の三冠達成馬が同時に激突するのは日本競馬史上初の歴史的快挙でした。
この「世紀の一戦」に対し、各メディアも以下のような最大級の賛辞を贈りました。
- 朝日新聞:「新旧『3冠馬』対決」
- 毎日新聞:「夢のような対決」「世紀のドリームレース」
- スポーツニッポン:「日本競馬史上最高国民的レース」
- 日刊ゲンダイ:「史上最大の決戦」
- テレビ東京:「日本競馬史上最高の150秒」
当日の馬券売上は21世紀のジャパンカップで最多となる272億7433万4600円を記録。
レースは超ハイペースの大逃げ馬が引っ張る極限の展開となりましたが、終わってみれば三冠馬3頭が上位を独占。
勝利したアーモンドアイは、日本調教馬として初めて国内外の芝GⅠ9勝を達成し、獲得賞金は歴代1位(当時)の19億1526万3900円へと到達。
次世代を担う無敗の若き天才2頭を従えて有終の美を飾ったこのレースは、今なお「JRA史上最高のジャパンカップ」として語り継がれています。
②レースまでの背景
この年のジャパンカップの最大の焦点は、日本競馬の常識を覆してきた「3冠馬同士の初対決」、そして世代の頂点たちが激突する「最初で最後の直接対決」という、あまりにも贅沢なストーリーが交錯していた点にありました。
- アーモンドアイ:2018年の牝馬三冠馬であり、すでに芝GⅠを8勝していた現役最強女王。前走の天皇賞(秋)で前人未到の記録を打ち立て、このジャパンカップを「引退レース」として選択。歴代最強の証明と有終の美を飾るため、絶対王者がラストランの舞台に立ちました。
- コントレイル:同年に父ディープインパクト以来となる「無敗のクラシック三冠」を圧倒的な強さで達成した3歳牡馬。菊花賞の激闘から中4週という強行軍ながら、絶対女王から最強の座を奪い取るべく、世代交代を告げる挑戦状を叩きつけました。
- デアリングタクト:同年に史上初となる「無敗での牝馬三冠」を達成した、もう一頭の3歳女王。コントレイルと同じく無敗のまま、3歳牝馬特有の「53kg」という軽量の武器と驚異の末脚を引っ提げ、偉大な先輩たちに挑みました。
これら3頭の歴史的3冠馬の激突に加え、日本からは2016年のダービー馬マカヒキ、2019年の香港ヴァーズ覇者グローリーヴェイズ、2020年の天皇賞(春)覇者ワールドプレミアなど、3頭を含む計8頭のGⅠ優勝馬が参戦。海外からもフランスのGⅠ馬ウェイトゥパリスが参戦しました。
空前絶後の「三冠馬3頭の直接対決」という構図に加え、それぞれの思惑と世代のプライドが絡み合い、対戦ムードは最高潮に達していました。出走馬15頭中8頭がGⅠ馬という、令和の競馬界を見渡しても滅多にお目にかかれない「超豪華メンバー」が東京競馬場に集結したのです。
③2020年 ジャパンカップ(GⅠ)出馬表
3頭の三冠馬による世紀の初激突に日本中が沸いた、第40回ジャパンカップの出馬表がこちらです。
| 枠 | 馬番 | 馬名 | 性齢 | 斤量 | 騎手 | 単勝オッズ | 人気 | 現役時代の主な実績など |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 1 | カレンブーケドール 🇯🇵 | 牝4 | 55kg | 津村明秀 | 24.9 | 5番人気 | 前年のジャパンカップ2着、オークス2着などGⅠ大接戦の常連 |
| 2 | 2 | アーモンドアイ 🇯🇵 | 牝5 | 55kg | C.ルメール | 2.2 | 1番人気 | 【3強】2018年牝馬三冠。 前走で芝GⅠ8勝の記録を打ち立てた絶対女王 |
| 2 | 3 | ワールドプレミア 🇯🇵 | 牡4 | 57kg | 武豊 | 45.4 | 7番人気 | 2019年の菊花賞馬。 前年の有馬記念でも3着に入った実力派 |
| 3 | 4 | キセキ 🇯🇵 | 牡6 | 57kg | 浜中俊 | 44.6 | 6番人気 | 2017年の菊花賞馬。 2018年ジャパンカップ2着の実力馬 |
| 3 | 5 | デアリングタクト 🇯🇵 | 牝3 | 53kg | 松山弘平 | 3.7 | 3番人気 | 【3強】史上初となる「無敗での牝馬三冠」を達成した3歳女王 |
| 4 | 6 | コントレイル 🇯🇵 | 牡3 | 55kg | 福永祐一 | 2.8 | 2番人気 | 【3強】父ディープインパクトに続く史上3頭目の「無敗のクラシック三冠」を達成 |
| 4 | 7 | ミッキースワロー 🇯🇵 | 牡6 | 57kg | 戸崎圭太 | 216.2 | 10番人気 | 2020年日経賞の勝ち馬。 セントライト記念など重賞3勝 |
| 5 | 8 | ウェイトゥパリス 🇫🇷 | 牡7 | 57kg | M.デムーロ | 136.9 | 9番人気 | フランスから参戦。 同年のサンクルー大賞(仏GⅠ)を制した強豪 |
| 5 | 9 | トーラスジェミニ 🇯🇵 | 牡4 | 57kg | 田辺裕信 | 460.3 | 15番人気 | 同年のエプソムC3着。 翌年に七夕賞を制覇 |
| 6 | 10 | パフォーマプロミス 🇯🇵 | 牡8 | 57kg | 岩田望来 | 312.5 | 12番人気 | 同年の鳴尾記念を制した8歳古豪。 アルゼンチン共和国杯など重賞3勝 |
| 6 | 11 | クレッシェンドラヴ 🇯🇵 | 牡6 | 57kg | 内田博幸 | 432.9 | 14番人気 | 同年の七夕賞覇者。 2019年福島記念などローカル重賞で活躍 |
| 7 | 12 | マカヒキ 🇯🇵 | 牡7 | 57kg | 三浦皇成 | 226.1 | 11番人気 | 2016年の日本ダービー馬。フランス・ニエル賞(GⅡ)も制覇 |
| 7 | 13 | ユーキャンスマイル 🇯🇵 | 牡5 | 57kg | 岩田康誠 | 101.1 | 8番人気 | 2019年新潟記念、2020年阪神大賞典など長距離戦線で活躍 |
| 8 | 14 | ヨシオ 🇯🇵 | 牡7 | 57kg | 勝浦正樹 | 321.6 | 13番人気 | ダートを中心に息長く活躍。 異例の芝GⅠ参戦 |
| 8 | 15 | グローリーヴェイズ 🇯🇵 | 牡5 | 57kg | 川田将雅 | 17.2 | 4番人気 | 2019年香港ヴァーズ(GⅠ)覇者。 海外GⅠでも実績を残した長距離の強豪 |
④レース展開
記事を読み進める前に、JRA公式YouTubeチャンネルの「2020年 ジャパンカップ」のレース映像を合わせてご覧いただくのがおすすめです。3頭の三冠馬による最初で最後の激しい攻防と、絶対女王の歴史的なラストランをあらかじめ確認しておくと、この後の解説がより分かりやすくなります。
🎥 2020年 ジャパンカップ レース映像(JRA公式)
キセキの「令和の大逃げ」
ゲートが開くとキセキが激しくエキサイトし、後続を大きく突き放す超大逃げを敢行。1000m通過「57秒9」という、息をもつかせぬ超ハイペースを刻みます。
離れた好位にはアーモンドアイ、デアリングタクト、カレンブーケドールらがロスなく追走。無敗の牡馬三冠馬コントレイルは、デアリングタクトをマークするように中団後方で牙を研ぎます。
運命の直線:絶対女王の独壇場
キセキが先頭のまま最後の直線へ。残り400mでゴーサインが出ると、アーモンドアイは「しびれるような手応え」で力強く鋭伸。早めに動いたグローリーヴェイズとともにキセキを捕らえ、残り100m手前で堂々先頭に立ちます。
大外からコントレイルが上がり最速34.3秒の猛脚で猛追し、内からはデアリングタクトとカレンブーケドールが激しく追い上げます。
しかし、完璧な立ち回りを見せた絶対女王のリードは決定的。アーモンドアイが後続に1馬身1/4差をつけ、GⅠ9勝目のゴールへ堂々と飛び込みました。
⑤勝負を分けたポイント
ゴールを駆け抜けた瞬間、ターフビジョンに映し出されたストップモーション映像を待つまでもなく、アーモンドアイが後続を圧倒して異次元の強さを見せつけたことは誰の目にも明らかでした。 しかし、場内を何より大きな感動の渦に巻き込んだのは、検量室前で涙を流したルメール騎手の姿と、そして何より競馬の神様が仕組んだかのような「3頭の三冠馬が上位を完全独占した」というあまりにも美しすぎる結末でした。
最大のポイントは、キセキが刻んだ「1000m通過57秒9」という超ハイペースのなか、アーモンドアイ鞍上のクリストフ・ルメール騎手が好位のインでロスなく完璧に立ち回ったことでした。道中は完全に折り合いに専念して体力を温存し、直線で仕掛けると「しびれるような手応え」で一気に突き抜けるという、絶対女王の走りをラストランの舞台で完璧に遂行してみせました。
菊花賞の激闘から中4週という強行軍ながら意地で2着に追い込んだコントレイル、内から鋭く伸びて3着に食い込んだデアリングタクト。下馬評通りの「三冠馬3頭」が1ミリの言い訳もきかない極限のスピード勝負の末に表彰台を独占したこの結末は、日本競馬の歴史に永遠に語り継がれる最高のフィナーレを迎えました。
2020年 ジャパンカップ(GⅠ)上位着順結果
| 着順 | 馬番 | 馬名 | 性齢 | 騎手 | タイム | 着差 | 通過順位 | 上がり3F | 人気 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1着 | 2 | アーモンドアイ | 牝5 | C.ルメール | 2:23.0 | — | 4-5-4-4 | 34.7 | 1人気 |
| 2着 | 6 | コントレイル | 牡3 | 福永祐一 | 2:23.2 | 1馬身1/4 | 9-9-9-9 | 34.3 | 2人気 |
| 3着 | 5 | デアリングタクト | 牝3 | 松山弘平 | 2:23.2 | クビ | 7-7-7-7 | 34.4 | 3人気 |
※1着アーモンドアイが貫禄の走りで有終の美を飾り、2着コントレイル、3着デアリングタクトと、終わってみれば下馬評通りの「三冠馬3頭」が上位を完全独占する歴史的な結末となりました。
⑥レース後の両馬
この伝説的な激突のあと、3頭の三冠馬はそれぞれ異なる歴史を歩み、JRAの歴史に偉大な足跡を刻んでいきました。
- アーモンドアイ:このレースを最後に惜しまれつつ現役を引退。日本調教馬初となる国内外の芝GⅠ9勝、当時の歴代最多獲得賞金記録を樹立して繁殖入りしました。
- コントレイル:翌年の大阪杯では重馬場に苦しみ3着、秋の天皇賞でも2着と敗れたものの、引退レースとなった2021年のジャパンカップを圧倒的な強さで制して三冠馬の威厳を証明し、種牡馬入りを果たしました。
- デアリングタクト:翌年のクイーンエリザベス2世Cで3着に入った後、繋靭帯炎を発症。長期休養を経て復帰し、ファンに大きな感動を与えながら走り続けました。
別々のレースに出れば歴史を塗り替えるほど強かった若き無敗の怪物2頭を、5歳トップの貫禄と圧倒的なスピードでねじ伏せたアーモンドアイの強さが、その後の競馬界においても語り継がれることになりました。
⑦この名勝負が競馬史に残したもの
2020年のジャパンカップは、「三冠馬3頭の直接対決」という日本競馬史上初となる究極のシチュエーションが、文字通り互いの威信をかけた極限のスピード勝負として現実のものとなった歴史的な一戦です。
- 史上初の芝GⅠ9勝:アーモンドアイが世界の現役最強として最高峰の評価を獲得。
- 無敗馬2頭の底力:中4週のコントレイルと軽量を活かしたデアリングタクトが猛追。
- 制限入場下の拍手:コロナ禍の静寂を切り裂くような感動が競馬場を包む。
掲示板を独占した超ハイレベル決着:
4着カレンブーケドール、5着グローリーヴェイズまで当時のトップホースが激走。キセキが作った超ハイペースを上位馬たちが驚異的なスピードで走り抜き、日本馬のレベルの高さを世界に証明した至高の財産です。
まとめ
2020年のジャパンカップにおける、アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトによる伝説の激突をお届けしました。
芝GⅠ9勝の金字塔を打ち立てて威厳を示した絶対女王アーモンドアイの圧倒的なスピード、中4週の強行軍ながら意地とプライドで2着に追い込んだコントレイル、3歳牝馬の斤量を活かして鋭く伸びたデアリングタクト。お互いの威信が極限の状態でぶつかり合い、三冠馬3頭が上位を完全独占したからこそ、このレースは今でも多くのファンに愛されています。
競馬は知れば知るほど奥深くて面白いスポーツです。記事内にあるJRA公式動画で、キセキが作った超ハイペースの激走と、歴史的な三冠馬たちの叩き合いをぜひ何度も見返してみてください。当時の感動と興奮がそのまま鮮明に伝わってくるはずです。



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